神戸市職員と大学生が取組む無料学習塾「神戸市職員有志・未来学習室」

2018年度のプロジェクトである、1WEEKトライアルに参加された、神戸市職員有志から代表の佐々木さん、副代表の小林さん、講師として関わる大学生の石島さん、大島さん、プロボノとして参加したブリッジメンバーの方々にお話を伺いました。

※本レポートは、2019年2月9日開催、神戸ソーシャルブリッジフォーラムでの登壇内容をもとに作成しています。

神戸市職員有志による未来学習室について

小林さん

(小林さん)神戸市職員の有志が中心となって、経済的理由などで塾に通うことができない中学生に、無料の学習支援を提供しています。神戸市役所には地域貢献応援制度というものがあり、「地域活動においては業務外、平日夜など積極的に出て行きなさい」と地域活動を推進しています。私も20代30代は、日々残業に追われていましたが、職務外で何かをしてみようという発想が出来たことや、代表の佐々木さん(神戸市保健福祉局で、先輩・後輩の仲)が職務上、貧困の連鎖や子ども支援に携わっていたことが、この活動を始めた大きな理由になります。佐々木さんに声をかけられ、「手伝います」と平成29年4月に団体を立ち上げ、8月から運営を始めました。

教室は、学園都市と本山南に2校開校しています。学園都市の教室は、駅前にあるUNITYという大学共同研究施設の部屋を使用しています。今年生徒数が増え、去年より大きい部屋を借りています。神戸市外国語大、兵庫県立大、近畿大の学生が中心に在籍しています。ほぼキャパ一杯の状況です。毎回だいたい1人の大学生に対し、2~3人くらいの子どもの割合で、子どもたちは3人掛けの机1つを1人で使い、大学生が横について教えています。講師は大学生中心ですが、社会人の方にも参加してもらっています。

本山校は、去年8月に開校したばかりです。現在の生徒数は中学生が5人で、受講生募集に力を入れています。そのため、ほぼマンツーマンで教えることが出来ています。大学生は、甲南大学や神戸大学の学生さんなどに参加してもらっています。

次に、今の活動実績と課題について紹介します。学園都市校は、受講生が昨年の15人から、今年は27人に増えました。一人親や母子家庭の子が7割くらい、3人兄弟など多子世帯の子もいます。1割くらいは不登校を経験した子で、今年度に入って、受講者も多様化してきています。

生徒数が増えている中で、学力をしっかり伸ばしていく必要がある子どもや、不登校時期の体調や気持ちを確かめながら、寄り添うように進めていく必要がある子どももいます。そのような中で、運営する側としては、生徒一人ひとりの指導記録を残し、それを指導する大学生の間で情報共有して、テストなどの結果を踏まえながら、苦手な部分などを考慮し、少しプログラム化していく必要があると感じています。

本山南校は、講師の大学生は募集すれば集まりますが、市職員のスタッフが集まらないのが課題だと感じています。ですので、今日来られている方でご興味のある方は一回見学いただき、お手伝いいただければと思います。

最後に、神戸市の学習支援団体7団体で、横の連携をしていこうと考えています。シンポジウムを開催し、神戸学習支援連絡協議会を設けています。その中で今後、合同研修会の声かけや連携できるところ、すみわけを行うところなどを考え、こうした教室が市内に増えていけばと考えています。

あと、中学3年生や高校3年生といった、大切な時期の子には、できるだけ大学生をマンツーマンでつけています。また社会人のフリーランスでプロの家庭教師をしている人は、受験のノウハウを持っていますので、面接の資料などを作ってもらったりしています。

大学生が中学生に留学などの経験を発表しようと、去年の12月から月1程度で発表会を開催しています。アンケートは、毎回ぎっしり書いてくれるので、大学生の声が中学生に響いていると感じています。

あとは、学園都市校で交流も兼ねて新年会を行いました。大学生同士で自分はこうやっていきたいなど、熱い想いがあったり、その他の先生などとの交流もあり、良かったと思います。

 

神戸ソーシャルブリッジ参加のきっかけ

(小林さん)学園都市校では教え方について、プログラムのノウハウ化が必要と感じたこと、本山校ではスタッフの確保をどうするかの2点が課題と感じ、応募しました。

 

講師として関わる大学生の声

(大島さん)兵庫県立大学4回生の大島です。参加動機は、元々ボランティアをしたいという気持ちではなく、卒業論文の制作で市民団体と教育格差について、何か書こうと考えていた時に、ゼミの教授に紹介してもらい参加することになりました。そのため、元々卒業論文の制作が目的で、団体を観察していたのですが、参加するからには生徒とも関わりたいという気持ちで、生徒の学習支援で、3ヶ月ほど関わらせていただきました。

関わる中で、論文のためだけでなく、生徒のために何かしてあげたいといったプラスの気持ちの変化がありました。ですので、みなさんも参加し、生徒と関わることで自分の中で何か気持ちの変化があるのではないかと思います。

(石島さん)兵庫県立大学4回生の石島です。この活動に参加した理由は、私は4年間大学で教職課程を履修してきました。その教職課程の一環として、何かボランティアをしようと思っていました。ただ、ボランティアは何でもいいというわけではなく、子どもたちと直接触れ合う機会や、単発1日だけのボランティアをするのではなく、長期間できるボランティアがしたいと思い、この未来学習室に参加しました。

教職課程を履修する中でしているとはいえ、子どもたちとの関わり方が難しくて、苦手だと思っていたのですが、この経験を通して、コミュニケーションの取り方や距離の取り方を学びました。また、塾講師をしたことが無かったので、勉強を教える方法が分からなかったのですが、どうしたら子どもが理解を深めることができるかを考え、指導力を高めることができたと思います。

その力を通して、勉強を教えることは大切だと思っています。夢ゼミ(学生たちが勉強する意味や、将来の夢について語る会)で自己紹介を兼ねて10分間スピーチをさせていただいたとき、中学生からの感想が、私が思っている以上に、それぞれが感じることやもっと頑張りたいといった気持ちを聞け、嬉しかったです。

講師は大学生が多いですが、社会人にも参加してもらい、勉強面だけでなく経験なども生徒に伝えていっていただきたいと思っています。もしよろしければ参加していただきたいと思います。

ブリッジメンバー・インタビュー

登壇者

佐藤 芳文さん
市役所にて保健福祉や区役所などで行政実務に従事。定年退職後の現在はまちづくりを担う多様な地域活動に取組んでいる。

参加のきっかけ・動機

(佐藤さん)神戸市職員有志に参加させてもらいました、実は私も職員のOBです。私は約10年前に定年になり、地元で色々地域活動に参加していた中で、この事業が耳に入って、ちょっと首を突っ込んでみようかと思い、どうせ入るなら現職員が頑張っている団体で何か出来ないかと思い、参加しました。

1WEEKトライアルに参加し、5人のメンバーのうち、4人は仕事を持っている人で、私だけ仕事をしていない立場でした。そのため、何か集まって相談しようとしても、みなさん仕事をもたれているので、難しい部分もありました。

 

1WEEKトライアル プロジェクト内容

初日は、会議をして、次の日に早速UNITYで見学をして、いろいろな声をお聞きしました。次の土曜に発表ということで、前日の金曜に20時頃からメンバーで1時間だけ集まり、最後のまとめをしました。一回教室をのぞかせてもらって、声をお聞きして、それだけなので、上手くまとめれる提案できるか悩みましたが、最終的にはこのように項目を分けてまとめました。

成果物の一部

最初小林さんからも話にあったとおり、スタッフの募集と生徒さんの管理が課題と思い、このようにまとめました。カルテなどの改善を提案させていただき、改善されました。

(小林さん)これから年度の切り替えがありますので、内部で相談していく中で、このアイデアを取り入れていこうと話しあう予定です。

 

プロジェクト参加の感想

佐藤さん

(佐藤さん)1週間だけ参加して、提案させてもらいましたが、これだけでは物足りないし、中途半端で終わりそうな気がして、この半年間の間で、市職員のOB会で話をして、スタッフ募集の記事を機関紙に載せてくれないか相談をしました。自由投稿なら載せられるという話まではできました。また、生徒募集や生徒のことに詳しいのは、中学校の先生だと思い、先生方が集まる機会に神戸市職員有志の活動を紹介しました。

私は今まで好きなことの活動をしてきましたが、ここにきて少し変化があります。新聞にこのような活動のことがあれば、参加するようにしています。みなさまも今日これを機会に興味を持っていただけたらと思います。

一般参加者からの質問

(一般Aさん)子どももですが、それ以上に保護者との関係性はとても大切だと思いますがどうされていますか。2点目は、対象は中学生ということですが、学習は小さいうちに始めるほどいいと考えられると思います。小学生を対象とした支援は、考えておられるのでしょうか。

佐々木さん

(佐々木さん)保護者とは、面談を年間2回ぐらいしています。私たちは仕事をしながらなので、時間の調整が難しいですが、ひとり30分から1時間ぐらい行っています。納涼会の場などに保護者の方に出席いただいたりしています。また学生の方と職員で話をできる場を作っています。保護者との関係性は非常に重要だと思っています。何とかそういう時間を取りたいですが、教えながらなかなか時間を作るのが難しいです。

(小林さん)保護者のみなさんと接する中で、お子さんが日曜の午後勉強しに来て、家に帰ってから僕たちに言えない本音とかを話すようであれば、何でもメール下さい、連絡下さいと言っていて、「帰ってきてこんな感じでした」と保護者から情報をいただくこともあり、こまめに情報共有して接することを心がけています。

(佐々木さん)それと小学生から教えたほうが効果的ではないかという質問ですが、幼い頃から教えれば教えるほど、その子の可能性が広がるとは言われていて、そうできたらと思うんですが、まずは中学生、塾にいけてないお子さんを何とかしたいということから出発したので、もっと拡大が出来ればいいのですが、手が回らないのが現状です。あと、小学生に教えておられる学習支援は地域に結構あったりするので、すみわけで、中学生というのもあります。

中学3年生の1学期に部活を引退した途端、みんな一斉に塾へ通いだす、そこで自分が塾に行けないことが分かり、格差を実感するタイミングではないかということから、中学3年生をターゲットに1年目はやってみようと始めました。今年は中学生全体に広げようと、結構な人数が集まっています。

(一般Bさん)職務外でこういった取り組みをされていると負担感も多いと思うのですが、この経験が実務に活かせたとか、これまでの経験を活かせたということはありますか。

(佐々木さん)職場によると思います。保健福祉や子育てに関する部署だと直結すると思いますが、たとえば職場が技術系だとか交通関係であれば、あまり結びつかないです。ただ、市長と話をする中で、つなぐ課(横断的な政策課題を解決していくため、地域や企業からの様々なニーズや課題を汲み取り、各部局との連携強化・調整を担当する部署)でつないでいかないといけないなとか、この活動を直接話しに行くと、どんどん自分の部署を超えていくのかなと思ったりはします。

これまでの職務経験で活かせたなというのは、子ども福祉をしていた経験や、大学経営に関わっていた経験で、うまく大学に入り込めてやりやすかったなと思ったりすることはあります。地域貢献支援制度は、本業以外の活動を本業にどう活かせるかというところの課題です。始めたばかりでまだ実績も少ない中、活動を本職へどこまで反映できるかが課題です。本業がおろそかになっているのではないかと思われないようにしないといけないなと思います。

(一般Cさん)経済的理由などの子どもたちを対象にしておられますが、どのように決めて進められていますか。

(佐々木さん)経済的事情というのは自己申告です。さまざまな理由があると思いますが、片親だけに限らないと思っています。所得があっても、行けない環境もあると思います。所得は標準的な家庭でも、兄が私立に行ったので、私は塾にいけないという妹さんが来られたりもする。塾に行けないという対象で募集をすると結果一人親の世帯の方が7割、多子世帯が2割、不登校が1割ぐらい。その友達が来ることもあります。

(一般Dさん)どうやって子どもたちを集めていますか?ボランティアだから熱意が伝わることもあると思いますが、逆に講師の大学生が集まらなかったり、保護者の方も無料でお世話になっているからとあまり高いレベルを求めていなかったり、教えるほうもボランティアだからとなってたりすることはありますか?参加者が多くなってきている中で、最初の気持ちをどう保っているのか。他の補習塾との関係性はどうでしょうか。

(小林さん)基本的には塾に行けない方が対象ということでは、奪い合いという構図は当てはまらないかなと思います。またボランティアだからこその熱意とも言えます。1年目のときに、給料だそうかという話もしましたが、学生にやめてほしいと言われました。無償で参加するからこそ、このメンバーだからこそ良くて、塾講師感覚で入ってこられるとまた違う場になってしまうと大学生からの話が出てきました。

スタッフサイドからすると、学習カルテなんかも大学生の発案でやっています。うちの団体のシステムの1つとして、大学生に発案してもらっている。例えば夏休みの英語特別講座してもいいですかなど、大学生のやりたいことは聞いて実現していくようにしています。

プロジェクト紹介

1WEEKトライアル
市職員有志と大学生が取組む無料学習塾。運営フロー可視化と改善ポイント発見にトライ