障がい持つ当事者も、そうでない人も集まることによって生まれるアイデアの面白さ「アイ・コラボレーション神戸」

2018年度のプロジェクトである、1WEEKトライアルに参加された、NPO法人アイ・コラボレーション神戸の代表板垣宏明さん、スタッフ北山ともこさん、プロボノとして参加したブリッジメンバーにお話を伺いました。

※本レポートは、2019年2月9日開催、神戸ソーシャルブリッジフォーラムでの登壇内容をもとに作成しています。

アイ・コラボレーション神戸について

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(板垣さん)アイ・コラボレーション神戸は、神戸市中央区のポートアイランドでwebサイトの制作、システム開発などを行っています。働いているほとんどのスタッフが身体、視覚、精神など、何らかの障がいを持っています。主にアクセシビリティ診断といって、例えば目が見えない人でも、僕みたいに手が不自由な人でも、ホームページが触りやすいようになっているかを診断しています。

アクセシビリティはウェブだけでなく、「アクセスのしやすさ」と言い換えれば、何にでも言えることです。そうした、「アクセシビリティ」を啓発しようという活動が「アクセシビリティの祭典」というイベントです。名前の通り祭りのようにしたいという思いから始めました。

今年(2019年)の5月16日に第5回を開催します。セッションと展示コーナーの二段構えで、セッションはウェブのアクセシビリティが主なテーマになりますが、去年は視覚障がい者の人、聴覚障がい者の人など当事者に登壇してもらい、最新情報を話してもらいました。展示は、未来を感じるような福祉機器や自分たちで開発した機器を展示します。

本年度のイベントはすでに終了しています

その他、「アイデアソン・ハッカソン」を昨年開催しました。障がい者である当事者が困っているもの、もっと生活が便利になったらいいなというものを実際に当事者がアイデアを出してメーカーと一緒に開発していくイベントです。去年は視覚障がい者の人を中心として実施をし、今年の8月ぐらいには肢体不自由の人を中心としたアイデアソン・ハッカソンをしたいと思っています。

 

神戸ソーシャルブリッジに参加するにきっかけ

(板垣さん)ソーシャルブリッジは事務局から誘われて知りました。お題にあげたのが、ホテルのバリアフリー情報サイトです。僕もよく地方に行ってホテルに泊まりますが、ホテルのバリアフリー情報はウェブページに全く公開されていなくて、障がい者の人も、高齢者や外国人がホテルに泊まりやすいような情報を調査してまとめて公表、公開できればいいなという話になりました。

 

プロジェクトの感想

(板垣さん)神戸のホテルで、誰もが安全安心して利用できるユニバーサル対応項目の作成というミッションのもと初めてお会いして、その2日後には、みなさん満場一致でお酒も交えながら夜のミーティングをするまでになりました。

アイ・コラボレーションは、神戸以外にも草津事務所があり、15年前に全国バリアフリー情報といって、全国のそれなりの数のホテルに連絡を取ってバリアフリーの部屋がいくつあるか、宿泊費はいくらか、といった情報を集めたものを作ったことがありました。でも15年前の情報は古くて、今はないホテルが含まれていたり、Wi-Fiなど誰でも欲しい情報がなかったりします。

また今はインバウンドが増えていて、外国人の視点でのバリアフリー情報を入れたいなど15年前の情報も生かしながら、新しい情報を加えて全部で156項目を洗い出しました。対象者は車椅子の人、視覚障がいの人、聴覚障がいの人、外国人、それから高齢者の5つです。

バリアフリーの基準は人それぞれで、例えばバリアフリーの部屋があると言われたのに、いきなり段差があることもあります。入り口に階段があっても部屋の中に手すりがあれば当ホテルはバリアフリーだというところもあります。僕も車椅子を使って生活する当事者として、こういう項目があったら泊まるときに便利とメンバーのみなさんにいろいろ言って、スプレッドシートに書き込んでいただきました。

面白かったのが「障がい者の人が着られるパジャマはあるのか?」とかメンバーからもいろいろアイデアを出してもらって、当事者の人間からするとツボというか、面白い、そんな発想はなかったなということも出てきました。当事者もそうでない方も集まることによっていろんなアイデアが出てきたのがすごく面白かったです。

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(北山さん)その後の発展として、成果物の項目をアンケートフォームにして、全国のホテルから情報を集めることを目標に、私たちが持っているたくさんの当事者のネットワークを活かして、障がい者の方たちに特に重要な項目を聞いて絞り込みをしています。その結果を元に、ホテルのみなさんにお配りするアンケートフォームを今作ろうとしているところです。

北山さん

もともと、プロジェクトのお話を聞いたタイミングが、「海外に提供できるバリアフリー情報は無いか?」という相談を受けてアイ・コラボレーションが持っているバリアフリーのホテル情報を英語化したらどうかと考えていたときでした。私たちは英語が苦手だし、インバウンド対応もわからないので、現代にあったバリアフリー項目の見直しと同時に、国内のバリアフリー情報を海外にも提供していきたいという思いがありました。

現時点で、ホテルに送るアンケートフォームの項目はできているのですが、神戸ソーシャルブリッジに同じタイミングで参加していた (株)フードピクトさんが、インバウンド向けの食品表示に関する情報をお持ちなので、食の情報も環境のバリアフリー情報もどちらも合わせてホテルから情報収集ができればより相乗効果があるのではないか、と今後ご一緒する展開を考えています。

さらに、京都外国語大学の先生も翻訳に協力してくださるとか、学生さんがボランティアとして協力してくださるとか、いろんな人が絡んでどんどん輪が大きくなっていっています。

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ブリッジメンバー・インタビュー

登壇者

山本泰生さん
行政職員。広報、IR、人事など事務系の一通りの経験を持つ。初プロボノ。

 

(山本さん)仕事は地方公務員で、業務としてではなく個人として参加しました。そろそろ定年退職も近付いて、何か地域活動をそろそろできたら、というタイミングだったのが参加のきっかけです。我々のチームは5人で、私と同じようにそろそろいい歳になってきて、地域活動をしたいという50代のマスコミ経験者、女性の権利を考える世界的なNGOの事務局長をされていて、帰国後に日本でも何かしたいとプロボノに参加された方、IT会社員で会社からやってみたらどうかと案内を受けてこられた方、20代の女性で福祉の勉強を学生のときにしていて今の仕事とは別に、福祉に関わっていたいとプロボノに参加されたメンバーでした。

去年の7月の1WEEKトライアルでは、初日に、しあわせの村の宿泊施設に行きました。施設のバリアフリーはどうなっているのかを見学する目的で、目の不自由な方と一緒に、目が見えない場合の情報の取り方や気になる点を教えていただきました。メンバーそれぞれ働いていて忙しいので、1週間をどうしよう……と。私自身は知らなくて、ちんぷんかんぷんだったのですが、Google ドライブのスプレッドシートでやりとりしたら?という話になり、クラウド上にエクセルみたいな表があって、そこにみんなが書き込めば書き込んだ瞬間にみんながそれを同時に見られるというツールを使って情報をやりとりしようということになりました。アイ・コラボレーション神戸代表の板垣さんと飲み会を1回しましたが、1回も会議はせず、ずっとクラウド上でやりとりをしました。

成果物の一部(クリックで大きな画像が見れます)

(山本さん)例えば車椅子の方は、到着時にまずどんなハードルがあるのか、到着後、部屋に入って、浴室、トイレ、食事などそれぞれのシーン別でどのようなハードルがあって、どうあればバリアフリーに近づくのか、チェックリストを作るのが我々のタスクでした。横に主にシーンを並べ、縦には車椅子の方だけではなく視覚障がい者や聴覚障がい者、さらには外国人も言語の壁がありアクセスできない障がいがあるよね、と対象者の軸を作ってマトリックスの表で当て込んでいきました。

 

取り組みの内容、難しかったところ、面白かったところ

山本さん

(山本さん)福祉の仕事を少ししたことがあったので、なんとなくイメージはできましたが、障がいを持っている方と一言でいっても、いろいろな方がいらっしゃって、想像を膨らませること自体が難しいこともありました。それでも、考えていくとどんどん、あれもある、これもある、と湧いてくるわけです。広がり始めたときに、何のためのプロジェクトかに立ち返って、最終的な目標は宿泊施設にバリアフリー化の改良をしてもらうことにあると考えました。そうすると、出来ないことばかりチェックリストにあっても使い勝手が悪いので、基本的にはユーザー目線で使いやすい、そして、ホテル側に改良してもらいやすいような表にしていこうという話になりました。

仕事の関係でアイ・コラボレーションのことは前から知っていましたが、新しい分野にチャレンジしていこうという代表者の方の意気込みがすごい。そして、NPOは事務局機能がなかったり脆弱だったりすることがあるので、我々でもお手伝いできることがあるのだなと思いながら作業をしていった覚えがあります。

 

参加をきっかけ何か変わったと思うこと

(山本さん)特技がある人は特技を活かすといいと思います。私みたいに英語も話せない、ITができるわけでもない場合には、積極的に自分の役割を見つけていけばいいのではと思いました。やることはたくさんあって、例えば議事録を作るでも、先ほどのスプレッドシートもそうですが、プロジェクトで知り得た知識をまた次のプロボノで活かせたら、これ知ってる?といい格好ができたり(笑)。少しずつプロボノの中で自分も成長していけたら良いのではないかと思いました。

繰り返しになりますが、特別な技能がなければ、特別な技能を身につけていこうと思えるきっかけにすれば良いし、違う業界の人と話をすると全然知らない単語がたくさん出てきて、それを知らないと言うのも恥ずかしいからこっそり黙って調べて、あ!こういうことか、と知るのも勉強になったと思います。法律を読み込んで調べたりするのは、行政職、公務員は得意で、地域の方と利害調整をするのも今回プロジェクトに入って気付いたのですが実は得意だったのだなと思いました。団体の方のご意見を聞くとか、ブリッジメンバーの中でもいろんな個性のある人がいますので、わーわーと一緒に言いながら、もうちょっと焦ってやらないと、とか、サブリーダー的なバランスを取るような役割を私自身はプロジェクトの中で発揮できたかなと思います。

 

参加者からのQ&A

Q:資金をどう捻出されているか?

A:アイ・コラボはA型就労支援事業所で、障がいを持った方が10人働いています。障がいを持った方を雇用するための家賃や職員の補助金は国から出ています。A型なので最低賃金を保証して事業収益から大体月10万〜20万ぐらいメンバーに支払いがあります。

 

プロジェクトの紹介など

1WEEKトライアル:
神戸のホテル等で誰もが安心安全に利用できるユニバーサル対応項目の作成にトライ!

山本さんの体験談:
熱意と苦悩に触れて「頑張らなあかんな」と思った1週間