【開催レポート】ローカル活動を始めよう! in KOBE -ソーシャルブリッジフォーラム2020 –

仕事の経験やスキル生かした社会貢献活動「プロボノ」に取り組む神戸ソーシャルブリッジ。この取り組みを多くの方に知っていただくため、2020年2月15日ローカル活動を始めよう! in KOBE -ソーシャルブリッジフォーラム2020- を開催しました。

基調講演では、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 主任研究員 藤澤理恵氏をお招きし、「社外活動・プロボノが個人にもたらすもの」と題して、企業人の社会貢献・プロボノ活動の意義についてお聞きました。

基調講演「社外活動・プロボノが個人にもたらすもの」

 

ゲスト
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 主任研究員
藤澤 理恵 氏

人事制度設計のコンサルティングや、研修開発、組織調査などに従事したのち現職。首都大学東京大学院・社会科学研究科・経営学専攻にて2015 年修士号を取得後、博士後期過程に在籍中。

企業人の社会貢献・プロボノ活動、柔軟な働き方等の調査を手掛け、組織を出入りする「越境」経験と、仕事で個を生かす「ジョブ・クラフティング」をテーマに研究を行う。

 

プロボノは参加者にとっても多くの意味がある

私は、プロボノをはじめ、企業人が非営利活動に踏み出したときの経験などを研究しています。プロボノとは、企業人や企業の活動をリタイアした方等が、個々のスキルを使って社会に貢献することです。私はプロボノの活動について、多くの参加者にアンケートや調査を行ってきました。プロボノは社会にとって大きな意味があり、価値がある活動です。NPOにとって意味が大きいことはもちろんですが、参加した方から、人生や仕事において学びの多い機会になっているという声を聞きます。今回は、プロボノを通して「参加者が得るもの」に焦点をあててお話しします。

私もプロボノを経験したことがあります。最初は役に立てるか不安でしたが、提案に喜んでいただき嬉しかったす。普段会えない人と出会えたり、知らない世界を知ったりできるのがプロボノです。

今日は研究者として、3点に分けてお話ししていきます。

 

①「越境」における学びとは

プロボノは豊かな「越境」経験です。まずは、耳慣れない「越境」という言葉についてお話しします。

「越境」は最近、人材育成の領域で使われることが多い言葉です。私たちは、組織(企業など)のなかにある文化や価値観、専門性のなかで、切り取られた「窓」からものごとを見ています。もっと良い方法があっても、その窓からは見えません。窓の内側での役割(立場や役職)にも価値はありますが、窓から出る、つまり役割を外して社会に出ると見えてくる世界が学びになります。今いる世界や文化の「アタリマエ」を問い直し、価値観や関心の外に出る、いわば異文化体験から学べることが多くあるのですね。

いま、なぜ越境が注目されているのか いま、社会は不確実な要素が増え、変化の速度が速くなっています。多様な人と活動し、答えのない世界へ踏み出さなくてはなりません。社会に出るなり即戦力を求められ、失敗が許されず、試行錯誤ができない社会です。そのなかで新しい社会課題は膨らみ、イノベーションが求められています。

このような社会背景において、求められる学びの形が変化しています。状況に「適応」することよりも、問題を解決することや、どのように取り組むかという問題設定が重要視されてきています。また、これまでは業務に早く慣れて、効率を高めていく「熟達」が大切にされてきました。しかし、これまでは注目されてこなかった、学びを振り返る「学びほぐし」や、多様な人たちと協働することによる学びに価値が置かれはじめています。

「会社の外か中か」といった形式ではなく、「どれだけ異文化を意識して活動するか」に越境学習の本質があります。

 

「垂直の学び」から「水平の学び」へ

出所:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

 

地域、企業、家庭など、ずっと同じ組織の中にいると、ものごとをより速くできるようになったり、より品質を良くできるようになったりしますね。そして、その組織のなかでポジションを上げていくことができます。これが熟達の学びであり、「垂直の学び」です。

一方、属している組織の「アタリマエ」が世の中のアタリマエとどれほどズレているのかを知ること、そして自分の能力が別の仕事にも役立つのではないかと考えることが、「水平の学び」、つまり越境の学びです。

 

②プロボノと「越境」

プロボノでは、どんな人がどんな動機でどんな学びを得ているのでしょうか。さまざまなプロボノ参加者に聞いてみたところ、個人のプロボノ参加理由は大きく分けて3つあるようです。

1. 社会貢献をするための「大人の社会科見学」
社会の役に立ってみたいという気持ちから踏み出してみて、社会課題を学びたいという動機。

2. スキルを社外で試すための「大人の武者修行」
自分のスキルを社外で試してみたい、異業種での仕事の進め方を学んでみたいという動機。

3. つながりを作るための「大人の部活動」
同じ関心を持つ人とつながりを持ちたいという動機。

仕事では成果を上げることが大切ですが、社会活動やボランティアでは、NPOなど団体のためであれば、どのような目的や動機でも基本的にはOKです。参加理由が人によってさまざまであることも、プロボノで多様性を学べる理由でしょう。

では、NPOはどうしてプロボノを歓迎するのでしょうか。日本は課題先進国と言われているように、課題がたくさんあって、それらの解決を目指すNPOがどんどん増えています。民間セクターの力が期待されていますが、課題解決に時間を割かねばならないので、組織づくりや合理化、効率化には時間が足りないというのが現状です。その足りない部分を手伝ってほしいというニーズがNPOにはあるわけですが、組織人やビジネスに長く関わってきた人にとっては、まさにそここそが得意分野です。

一方、企業側が積極的に社員にプロボノを勧めるケースも増えています。社会課題を学ぶことで、そこにイノベーションの種を見つけられるかもしれないからですね。つまり、NPO、企業、社員の三方よしと言えます。

 

アンケート調査「プロボノはあなたにとってどのような経験でしたか?」

出所:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

 

※プロボノワーカーとは認定NPO法人サービスグラントで活動を行うプロボノ参加者の名称

こんな風に参加者にとって、有意義だったことが調査からうかがえます。どのような体験だったか、日頃の仕事の違いについて、さらに詳しいインタビューをいくつかご紹介します。

 

目的意識の高さ
「異文化交流みたいな感じですよね。いかに自分が社内の狭い世界で生きているのか分かりました」というのは、海外物流に長く携わってきた40代の女性の声です。

同じプロジェクトに参加したソフトウェア開発をしている30代男性は、「NPOの皆さんは強い思いを持って取り組んでいらっしゃるので、そういう方々の話に惹きつけられます。普段の仕事では、どちらかというとパッションよりも理詰めで話す人のほうが多いので、それが一番大きな刺激でしたね」と言っていました。

チームの関係性の違い
プロジェクトマネジメントをしている30代男性は、「いかに自発性を出させるかということが本業では工夫が要るところなのに、(自発性を)出させようとしないでもどんどん出てくるというのは驚きだった」と感じつつ、「命令形という選択肢を削がれたなかでやる。その制約が面白かった」と言います。「(仕事でも)自分の役割を理解しているからこそ『言わない・言えない』みたいなものがみんな結構あるんじゃないか」と感じ、周囲に意見を訊くようになったそうです。

報酬の違い
「仕事ってプロとして、『やって当たり前』なので、ありがとうと言ってもらえることがあまりない。プロボノでは、素直に直接ありがとうと言ってもらえて、すごく嬉しかったです。自信にもなりました」という声がありました。このように感謝を報酬として感じ取った一方で、「普段、自分の事業所に閉ざされて、あんまり外とコミュニケーションを取ることがないので、いろんな人たちと知り合い、チームを組んで成果を出すことが楽しかった」と、楽しさを報酬として挙げた人もいました。

 

③プロボノを通じて得られるもの

続いて、「プロボノを通じてどんなものが得られるのか」についてお話しします。先ほど、プロボノでの高い目的意識や自発性、感謝してもらえる嬉しさや楽しさについてお話ししました。プロボノに参加することが、これからの仕事に必要な能力を育てていくことになります。今後、仕事はプロジェクト化していくと言われています。やることがずっと決まっている、上司が言ったとおりにやればいい、といったような仕事は減っていくわけですね。新しいものをつくって終わったら解散しましょうといった関わり方、場所や時間を越えた仕事のつくり方が増えていきます。モノをつくるだけでなく、コトや体験をつくるビジネスも広がってきました。

プロボノの体験談であったように、これからは高い目的を持つことや、みんなに権限を渡しながらチームをつくること、合理性よりも感性に着目することなどが大事です。

つまり、未来の職場をつくっていく上で、プロボノは親和性があるんですね。そこで得られるリーダーシップが重要です。プロボノ的なリーダーシップは、異文化の下で手探りの活動をしながら、社会的インパクトをゴールに置き、正解を示さずポジションの力を使わずに人に動いてもらうことが必要になります。

Must(やらなければいけないこと)、Will(やりたいこと)、Can(できること)の重なりを大きくしていくことが、やる気の出る仕事と言われています。会社は、まずMustがあり、そこにWillやCanを重ねていく場ですね。一方、プロボノは、WillやCanを問いかけて、自信を積み重ねながら、Mustを引き寄せていくような取り組みと言えます。

出所:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

 

自分の強みを他人とのやりとりのなかでどう生かしていくか、どんな活動に熱意をどう反映させるのか、地域や人とどうつながっていくのか。プロボノには、自己理解と他者理解、目的理解を見直す学びがあります。

仕事においても同様です。強みや関心を生かすような仕事のつくり方をしてみる。誰とどのような関係性で仕事をしていきたいか考えて働き方を変えてみる。自分が意義を感じる目的に仕事を寄せていく。これは「ジョブ・クラフティング」といって、自分が仕事の主人公になる方法として今注目されている働き方でもあります。このようにプロボノから学び、働き方を変えていく人が出てきています。

 

最後に、プロボノ参加者の声を紹介します。

「プログラム参加後もNPOとの関わりが増え、今後もイベントの企画・運営をしていくことになった。子どもがいても、働くことはできる、子育て以外に活動をする時間をつくることができることを実感し大きな収穫、そして自信にもなった。生きがいを得られた経験になった」(30代/女性/育児休業中)

「有志の被災地支援募集に手を挙げたことを、自身の変化と感じるが、それはやってみないと分からないことがいっぱいあるんだなと思った。思うだけじゃなくて、行動に移せるようになりました」(40代/男性/行政職)

「チームのマネジメントを経験することができて大変な面もありましたが、得るものも大きかったと感じています。いずれマネジメントしていく立場になったときに生かしていきたいと思います」(40代/男性/行政職)

「みんなの力で(やりとげる)ということを意識したことが発見でした。今までは自分がやらなきゃ誰がやるのという気持ちでした」(30代/男性/専門職)

以下の記事もあわせてお読みください。
経験者が語る「共創と共鳴」「新たな経験ができる場所」
 

新しいつながりと、踏み出す勇気、エネルギーが最大化するキャリアや仕事環境をつくるきっかけをプロボノで得られるのではないでしょうか。ありがとうございました。