3つの視点によるプロボノストーリー・個人編

企業の視点、NPOの視点に続く、「個人の視点」から語られるプロボノの経験についてご紹介します。お1人目は行政職員としてプロジェクトに参加された江上さん、お2人目は協同組合の職員として参加された山本さんです。

左:江上さん(尼崎市行政職員)
右:山本さん(コープこうべ職員)

 

自己紹介をお願いします。

(江上さん)現在は尼崎市の行政職員で元漫才師です。色々と地域活動をやっているのですが、最近、力を入れているのが「お笑い行政講座」です。尼崎市役所には元漫才師が2人いまして、一緒に「行政のテーマを漫才形式でわかりやすく伝える」ことをしています。

(山本さん)生活協同組合コープこうべで働いています。今関わっているのは職員教育です。組織で働く職員向けの研修や、職員を育てていくためにどういう戦略を練っていくか、などに取り組んでいます。

 

コープこうべさんの職員教育はどんなことをしてるのでしょうか?

(山本さん)コープこうべというと買い物するところ…そういう印象ですが、ずっと昔から社会的課題を解決していく活動に取り組んで来た団体です。今は、本来小売は暮らしの課題を解決するための手段だと考えていまして、今これだけたくさんの課題がある世の中ですから、通じてさらにもっとたくさんの社会的課題の解決につなげていけないかという発想と、想像力を身につけていく研修プログラムを提案、検討しています。

 

実際にプロボノとして、NPO、地域団体の支援に関わってこられた経験を聞かせください。

(江上さん)市役所に転職して、元漫才師がずっと紙とパソコン相手の仕事でした。予算決算、条例作成、行財政改革の計画づくりとか内部管理ばかりで地域に出て行って活動したいなと思っても、自分の意思でやりたい仕事を選べるわけじゃない。だったら勝手にプライベートで地域活動したらええやん、と思い始めた頃にプロボノに出会いました。

2010年7月にクローズアップ現代に取り上げられたのを見て、「これか!」と直感するものがありました。大阪のプロジェクトが始まるので説明会をやりますというお知らせを受けて聞きに行きました。

すると「大阪の地域に入るプロボノワーカーを募集します」という内容で、私の実家がある鶴見区でもプロジェクト募集があったんです。大学を出るまで住んでいたところじゃないですか。ここまで整ったら運命でしょう。応募しないわけにはいかない。それがきっかけでした。

参加したプロジェクトですが、これまた、すごいところに放り込んでもらえた、という感じで。自治会ではいろんな事業をしていると思うのですが、事業がどんどん進化していくと自治会がNPO法人化するケースがあるんですよね。そうしたNPO法人になった先進的な自治会の方々と一緒に地域情報を発信するホームページを作成する、その中でマーケティングを担当する立場での参加でした。

たとえば、なぜ若い人たちは町会に入らないのか?を調べましたが、町会の方は若い人が入ってこないのは「役割が面倒臭いから」と思っているのですが、若い方の世代からしたら、「入り方聞いてないし、誘われていないし、言われたら入るのに…」という回答がアンケート上では多かったんです。

こういう世代間や、誘う方と誘われる方のミスマッチなどを調べて、どういったニーズやきっかけがあれば地域活動に若手も入っていくのか?そこに繋げていくためにホームページをどうする?といった調査部分を手伝いました。

 

(山本さん)1つ目の参加は、「NPO法人にしよどにこネット」さんを支援させていただきました。団体さんの活動は子育てをするママさんの駆け込み寺のような存在として、何か困ったことが起きた時に、子育て経験のある方がそこにいて、いろんな相談にのってくれるという場所、そんな場所を大阪府西淀川区で運営されている団体さんでした。

プロジェクトの内容は、「業務の連絡を円滑にする」ことが目的でした。西淀川区の中に10箇所ほど拠点をお持ちなんですが、代表の方が全てをみていたという状況でした。各所のスタッフさんから、たとえば「休みます」という連絡があったり、「~月~日、~さんがお越しになります」という連絡があったり、こういった細かい連絡の全てを、代表さんがLINEやメールを使いながら全て対応されていたそうなんです。

このように様々な連絡を収集し管理するのが大変な状況になっていたので、Googleフォームという無料のクラウドツールを使って情報共有を整理しながら行う、そんな仕組みを提案しました。

もう1つ別の団体さんですが、介護をメインにされている「ハッピークラブ」さんのプロジェクトにも参加しました。池田市伏尾台というエリアなんですが、宝塚市との境目ですね。高齢化率が41%という中で、高齢者向けのデイサービスの運営、介護予防の体操、様々な地域活動を応援する、3つに取り組まれています。

介護予防の場作りに子育て世代といった若い方や、男性がスタッフにもっと関わってもらうためにはどのようにしていけばよいのか、判断に足る情報を集めるマーケティング調査をお手伝いしました。

 

参加していかがでしたか? 苦労した点や感想などをお聞かせください。

(江上さん)集まってきてる人たちがすごい刺激的というか、別にみんな暇だから来てるわけじゃない、忙しいのにさらに社会的な活動をする、という人ばかりでした。そういう前向きな人たちからもらう刺激と知識に影響を受けるんです。

私は今「ファザーリング・ジャパン関西」というNPOに入って活動もしていますが、それもプロボノのイベントで出会った人からの影響です。自分の人生が変わるようなものと出会えたんです。NPOの支援という大義はもちろんありますが、そういう団体の背中を押しているようで、回り回って一番押してもらったのは自分、だと思います。

市役所の仕事をしていると、法律や公文書作成などの能力は身につきますが、マーケティングやデザイン、ホームページの構築などに携わることはほとんどありません。そうした「市役所にいると決して身につかない視点」も得ることができました。

こういう実務的な経験以外では、「外に出て、役所の看板抜きに個人の看板で、民間でバリバリの人とガチで、本気のミッションに挑む」という経験ができました。それを経験した後なら、もうなんでもできますよね。その後もいろんなことに、ビビって尻込みしたり無理やと思って諦めたりすることはなくて、その時の経験が自信になってるんだと思います。

 

(山本さん)とても勉強になった、が一番の感想でした。現在27歳。6年目の職員。なんのスキルもないと見られてもおかしくない年代ですが、それでも役に立てる事がある、世の中のために仕事をやってるんだ、ということを実感させてもらえる経験になりました。

本当に必要としてくれている人たちがいる、そこに僕が行って一生懸命取り組むだけで、こんだけ感謝してくれる人がいるんだとういことを実感できたのは、非常に良かった。会社では得られないような満足感というか、自己肯定感というか、そういったものが強く感じられる経験でした。

 

自分も社会貢献活動に参加してみたい、と思っている方々へメッセージをお願いします。

(山本さん)「うん、やっぱり三方よしの活動だ」と思います。私はプロボノワーカーという立場で関わって本当に勉強になりました。「三方よし」という言葉、近江商人の言葉です。

団体の方々からありがとうという言葉をいただいたこと。団体さんを支援することで、団体さんの活動の先にいる受益者の方々を、間接的に支援し役立つことができたこと。そして私たちの成果物をを通じて団体さんがさらに活動の幅を広げていけることで、もっとNPOの活動を求めている方々の為になるということ。これで三方よしという言葉を使っています。

 

(江上さん)自分の中のソーシャルの窓を開けてくれたというか、その地域とか、社会課題と関わる出発点になったというか、そういう風に感じています。プロボノに関わらなかったらずっと内部管理をやっていて、プライベートで街に出て行って社会課題と自分が正面に向き合うということをしてなかったと思うんです。

プロボノはお手伝いという形でNPO・地域団体さんと関わっていくのですが、そんな中で自分が一番得したかなとも思うし、人生のターニングポイントになったし、自分のソーシャルな部分の人生の窓口になってくれたということで、自分が押されてるやんという、のが感想であります。

 

※本レポートは、2018年3月25日開催、神戸ソーシャルブリッジセミナーでの登壇内容をもとに作成しています。

 

プロフィール

江上 昇 さん
お笑い行政講座/尼崎市役所、尼崎大学・学びと育ち研究担当
元松竹芸能の漫才師。桂山智哉(元よしもと・尼崎市職員)らと共に、「難しい行政課題を漫才でわかりやすく伝える」等の活動を展開中。他に「尼崎ENGAWA化計画」「NPO法人ファザーリング・ジャパン関西」での活動など。

山本 周作 さん
生活協同組合コープこうべ 人材開発担当
社会人6年目の27歳。生協の宅配事業の御用聞き兼配達担当を経て現職へ。25歳の時に社内の外部派遣型インターシッププログラムを活用し、サービスグラント(東京事務局)にて約1年間勤務。コープこうべに帰任後はプロボノワーカーとして関わるようになり、仕事をしながら2つのプロボノプロジエクトに参加。