3つの視点によるプロボノストーリー・NPO編

企業人が仕事で培った経験やスキル、専門性はNPOの運営のどのような場面に貢献ができるのか、そして、プロボノのような第三者からの応援によってNPOにどのような変化が生まれているのか。実際に「寄付管理プロジェクト」に取り組まれた、NPO法人こどもコミュニティケア代表の末永さん、三井住友銀行の足立さんにお話をお伺いしました。

左:末永さん(こどもコミュニティケア代表)
右:足立さん(三井住友銀行)

 

こどもコミュニティケアの活動について教えてください。

(末永さん)14年前から、神戸市垂水区で小さな(認可外)保育園を始めました。特徴的なところは共生保育です。

インクルーシブ社会というのが最近話題になっています。
医療的ケアという言葉が最近2~3年、厚生労働省のホームページにもようやく掲載されるようになりましたが、障害があるお子さん、生まれつき病気があるお子さんなど、医療的ケアが必要なお子さんと、定型発達というのでしょうか、健康なお子さんたちが、みんな一緒に育ち合おうという「共生保育」が私たちの合言葉となっています。

医療的ケアのお子さんというのは、障害者区分に当てはめられませんので、特別なヘルプが必要だとか、多くのニーズがあるという風には思われていません。4歳以下の医療的ケアが必要なお子さんのうち、認可保育園・認定こども園に通えている割合は、5%、という数字があります。

私たちは看護師も常駐する環境を整えることで、医療的ケア児も受入れられる保育園として、ここ6年前くらいからやっとコンスタントに仕事ができるようになってきましたが、それまでは民間として、全くの手弁当で、展開してきました。

今は約2~3割ぐらいは日常的に医療的なケアが必要なお子さん、7~8割はケアの必要がない健康な保育園児さんを、1日11時間、月曜日から土曜日まで、看護師と保育士の連携チームで保育する、そういう保育園をやっているところです。

兵庫県内で医療的ケアのお子さんが認定保育園に入れているのは、18人だけなんだそうです。「その内6人が当園にいるんだけどなぁ、どういうことなんだろ…?」 と残念に思いつつ、神戸市では小中学生向けの医療的ケアが支援事業が始まってるということなので、大いに期待しているところでもあります。

 

どのような課題や要望があってプロボノのサポートを受けようと思われたのですか?

(末永さん)私達は行政の補助金や、障害者支援とか、そういった公的制度の枠にはまらないところを支援しています。その為、NPOはどこでもそうですがお金が潤沢ではないので、みなさんから寄付を常に募ってきたんですね。寄付というのはみなさんの大切なお心ですので、それをいい加減に扱うわけにはいかないわけです。

ところが保育園みたいに四六時中、日常的に11時間も仕事をしているようなところだと、目の前の安心安全が一番大切なので、せっかくご寄付をいただいたのにお礼状を出し損ねたとか、年次報告書を送りそびれたとか、リストにミスがあるかもとか…、そういった事務的なところが後回しになりがちで、うまくやりくりできない課題がありました。そういったタイミングで、プロボノのお誘いの連絡が舞い込んで来ました。

「寄付管理やりませんか?」という内容で、是非お願いしたいと思って「はい、やります!」と即日返事をして、足立さん達、プロボノチームと出会うことができました。

 

足立さんがプロボノに参加をされたきっかけや動機についてお伺いできればと思います。

(足立さん)平成元年に三井住友銀行に入りました。入行から30年近くなりまして、今は本部にいますが、ずっと法人営業をやってきました。具体的にはご融資をしたり、企業さまの色々な相談に対応するような仕事をしてきました。いわゆる企業に関することが自分のスキルなのかと思っていました。一方でずっと同じ銀行で働いているものですから、外の世界があまり見えていないんですね。

沢山のお客さんのところにお邪魔しますので、色んな企業様を見てはいるのですが、そう言いながらもずっと三井住友銀行という組織の中にいる。そんなさなか、CSR室が主導するプロボノ活動を知り、友達に誘われたというのが最初のきっかけですが、参加してみようと思いました。

 

保育園の運営でお忙しい中、いかに確実に効率的に寄付に関する事務を行うか?この課題に対して、どのような支援をされたのか?プロジェクトの中身について教えてください。

(足立さん)メンバー5人でチームを組みました。こどもコミュニティケアさんにお伺いし、ディスカッションをして現状を伺い、課題の整理をするというところから始めました。

お話の内容は、寄付金管理からその後のお礼状までの流れだったので、まずはその周辺の課題を洗い出ししました。最終的な提案のポイントとしては、一連の流れをきちんと整理したマニュアルを作るところをお手伝いさせていただいたことです。

日常でいろんなスタッフの方が活動をされていて、横同士の連絡がなかなか取れないことも多いようなので、マニュアルをきちんと作って、それに沿って誰もがマニュアルを見れば動けるようにするのが大事かなと思いました。

マニュアルでは、お礼状はこういうタイミングで出しましょうねとか、そもそも寄付をいただいたらこういう流れでチェックしましょうね、といった部分をお示しした次第です。銀行ですのでマニュアルは得意中の得意ですから、やりやすかったと思いますね。

 

末永さん、成果物をご覧になられて、どのように感じられましたか?

(末永さん)私はもともと公立病院の看護婦で、公務員からNPOに来たというケースなんですけど、看護師とか、保育園の保育士さんたちが一番苦手なのは仕組み化なんですね。その時その場をしのぐのが得意で、臨機応変に…というのが口癖です。

マニュアルを使ったことで「フローってこういうことか!」と思いました。今までお礼状を出しても、本当にちゃんと出せたのかとか、もう1回改めてチェックする仕組みがばらけてしまっていたのですが、このマニュアルができあがって、どのファイルで最終的にOKを出すとか、そういった基準が決まったことによって、すごく私たちが安心して寄付管理ができるようになった、と思いました。

自信がついたというか、これで基準を守って、ちゃんと日付を書いて、はんこを押していく、やれることをやっていくということが、地道だけれどもいかに大切なことかを学ばせていただきました。

今も当日作成いただいたフロー表をほぼそのまま使ってるんですけど、提案を受けて、寄付金の受入れ窓口も増えたんです。新たに導入したシステムのおかげもあり、更に寄付も増やすことができました。

 

一方、足立さんは、仕事の経験を生かす形でNPOに関われられて、ご自身の中に変化はありましたか?

(足立さん)今まで新聞読んでても自分の業務に関わることしか見てなかったんですが、たとえば認可保育園の記事が出ると、思わず切り抜いてしまったりとか、社会に対して心というか、目が開いたという風に感じています。

 

寄付管理のベースが整ったことよって寄付金が増えたなど、具体的な成果に繋がりましたか?

(末永さん)寄付金は増えました。寄付管理のマニュアルができた事が全てではないですが、寄付金が増えたこととの関係は大いにあると思います。

寄付金をいただいてもきちっと対応できないとわかっているのに寄付をくださいって、逆に言えないんですよね。いい加減なことはできないですし、それではかえって信頼がなくなります。寄付はぜひお受けしたいけれど、自分たちから積極的に声を上げてやっていこうというのは受入れる準備が整っていなければなかなか難しいものです。

昨年度、「緊急提言プロジェクト」というものを実施し、1ヶ月で60万円ぐらい集めたんですけど、それを打ち出せたのも、作っていただいたマニュアルとフローがあることが大きかったと思います。入りたての事務職員でもちゃんと順序通りに、何曜日に処理をするというのが決まってるから、よしやれるぞといって踏み出せたというのはすごくあると思います。

 

※本レポートは、2018年3月25日開催、神戸ソーシャルブリッジセミナーでの登壇内容をもとに作成しています。

 

プロフィール

末永 美紀子 さん
NPO法人 こどもコミュニティケア 代表理事
看護大学卒業後、大学病院と小児専門病院勤務。出産を機に退職。医療的ケア児や障害児と健常児が共に育つ「共生保育」の保育施設を開設、運営。夫と男の子2人の4人暮らし。

足立 哲也 さん
三井住友銀行 リテール業務推進部(大阪) 部長
三井銀行(現:三井住友銀行)入社。法人営業、審査を経て2017年4月より現職。SMBC(現:SMFG)プロボノ活動を通じてプロジェクト2件とサービスグラント(関西)の事務局支援に参加。中小企業診断士。